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[[QCD Matter Open Forum (QCDMOF)]]
*クォークとグルーオンの世界 [#c09184d1]
***クォーク・グルーオン・プラズマ [#te7b1144]
-クォーク・グルーオン・プラズマ

-クォークとグルーオンの世界
私たちの日常下において、電子は原子核のまわりに電気的な力によって束縛されていて、原子を形成しています。原子核の電荷数と電子の数は等しく、原子は全体として中性の状態にあります。通常の原子核は、陽子と中性子(総称して核子と呼ぶ)から成り立ち、これらの核子は3つのクォークから構成されています(クォークには、u、d、sクォークなど6種類存在すると考えられている)。クォークから構成される粒子(=ハドロン)には、核子などのように3個のクォークからなる粒子のほかに、クォーク・反クォーク対から成る中間子があります。これらのクォークは、それぞれの重粒子あるいは中間子に強く束縛されており、けっして単独で飛び出すことが出来ないという不思議な性質を持っています。

現在の素粒子・原子核物理学の標準模型を構成する理論の一つである「量子色力学(QCD)」によると、 強い相互作用をおこなう粒子(ハドロン)の集まりは、高温(150-200 MeV)高密度(>1 GeV/fm^3)の極限条件下ではクォークとグルーオンが主体となる新しい物質相「クォーク・グルーオン・プラズマ」(QGP)へ相転移することが予想されています。このような高温度•高密度状況下では、核子間距離が非常に小さくなり、核子の境界が重なり始め、核子内に閉じ込められているクォークは自由に動きだすと考えられます。クォークが核子や中間子への閉じ込めから開放されて、クォークとクォーク間相互作用を伝えるグルーオンが自由に動き回れるクォーク・グルーオン•プラズマが生成されることになります。

-初期宇宙

ビックバン宇宙論によると、現在の我々の宇宙の年齢は 137 億年と言われています。 
現在の宇宙論では、t = 10^-37 秒に宇宙のインフレーション 急激膨張が生じ、その後、素粒子であるクォーク対やグルーオン、光子、電子などのレプトン が生成されたと考えられています。t=10^-6 - 10^-5 秒 (数μ秒から数10μ秒; 1μ秒は 10^-6 秒)では、これらの素粒子はばらばら、つまりクォークとグルーオンがプラズマ状態であったと考えられています。クォーク・グルーオンプラズマとは、 ビックバンから数10マイクロ秒後の宇宙初期に存在したと考えられる、「素粒子の火の玉」だと 言えます。

またクォーク・グルーオン・プラズマは、ハドロンの質量獲得機構を理解する上でも非常に重要です。我々の質量の大部分は原子核を構成している核子で与えられます。核子を構成するクォークの質量はせいぜい20×10^{-30}kgと見積もられていて、クォーク3個を集めても陽子の質量1700×10^{-30}kgに遠く及びません。我々の質量の大部分は、QCDの強い相互作用により引き起こされる「カイラル対称性の自発的破れ」(2008年ノーベル物理学賞)によって生成されていますが、クォーク・グルーオン・プラズマは、カイラル対称性も回復された場として、質量獲得機構に重要な知見を齎します。


-QCD相構造

クォークは通常状態では単独で観測することはできません。クォークはハドロンの中に閉じ込められており、「カイラル対称性の自発的破れ」が起こっています。しかし、ビッグバン直後の宇宙初期の高温度状態では、クォーク・グルーオン・プラズマが実現されており、カイラル対称性が回復していたと考えられています。 また、中性子星等のコンパクト天体内部の高密度状態ではハドロンとは異なるクォーク物質が形成され、クォーク2個がペアを組む「カラー超伝導相」が実現されている可能性があります。下図は、横軸を密度、縦軸を温度としたときの、 原子核物質の相図を表しています。水が温度や圧力の変化によって、固体、液体、気体など様々な形態(相)を取る様に、原子核や 陽子、中性子などの物質相も、高温度・高密度領域ではクォーク・グルーオン・プラズマが、低温・超高密度領域ではカラー超伝導相などが実現されていると考えられています。
このようにクォーク・グルーオン・プラズマを理解することは、QCDの物質相を解明する上でも非常に重要となります。





以上のように、クォーク・グルーオン・プラズマという未知の物質相は、我々が生きているこの宇宙がビックバン直後に経験したものであり、宇宙の進化や星の構造、極限物質の豊かな性質を解明する上で非常に重要かつ面白い研究対象です。

***高エネルギー重イオン衝突実験 [#v927712f]

クォーク・グルーオン・プラズマを実験室で生成し、その特性を調べる手法として高エネルギー重イオン衝突があります。重イオン、すなわち鉛などの重い原子核同士を高エネルギーで衝突させ、 衝突直後に高温・高密度物質を生成します。
衝突させるのは 原子核同士ですので、十分大きな体積でかつ、高エネルギーでの衝突あれば、相転移温度を十分 超える高温物質の生成が期待できます
クォーク・グルーオン・プラズマを生成する試みが、1980年代より本格的に始まりました。
1980年代から、米国ローレンスバークレー研究所のBEVALAC加速器や、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)のAGS加速器や欧州共同原子核研究機構(CERN)のSPS加速器を用いた実験が行われて来ました。BNL-AGSでは核子あたり10GeVの金の原子核ビーム、CERN-SPSでは核子あたり200GeVの硫黄ビーム、核子あたり160GeVの鉛ビームを用いた固定標的実験が行われてきました。
2000年より、世界初の衝突型ハドロン加速器BNL-RHIC加速器が、2009年からは欧州CERN-LHC加速器が稼働を開始し、これまでの10~100倍も大きな衝突エネルギーでの検証が可能になりました。
日本の多くの研究機関が、BNL-RHIC加速器を用いた国際共同PHENIX実験やCERN-LHC加速器を用いた国際共同ALICE実験に参加し、最先端の実験研究を展開し、
-QCD物質が持つ多様な相構造の解明
-極限状況下におけるQCD多体系の性質解明、クォーク物質相の持つ熱力学的な性質や物性の理解
-非摂動的な領域での量子色力学の精密検証
-クォークの質量獲得の解明
-ハドロンへの閉じ込め機構の理解
-ビッグバン後の宇宙初期に見られたQCD相転移の理解
の解明を進めています。


***これまでの成果[#vdb55aac]



*リンク [#q49e6b1d]


-実験研究関連のサイト
--CERN-LHCのALICE実験関連
---[[CERN:http://www.cern.ch/]]
---[[LHC:http://lhc.web.cern.ch/lhc/]]
---[[ALICE:http://aliceinfo.cern.ch/Public]]
---[[ALICE Japan:http://alice-j.org/]]

--米国ブルックヘブン国立研究所PHENIX実験関連
---[[ブルックヘブン国立研究所:http://www.bnl.gov/world/]]
---[[RHIC加速器:http://www.bnl.gov/rhic/]]
---[[PHENIX実験:http://www.phenix.bnl.gov/]]
---[[STAR実験:http://www.star.bnl.gov]]
---[[PHENIX Japan:http://phenix.cns.s.u-tokyo.ac.jp/phenix-j/index.html]]

--国内研究機関
---[[東京大学原子核科学研究センターPHENIXグループ:http://phenix.cns.s.u-tokyo.ac.jp]]
---[[筑波大学 PHENIXグループ:http://utkhii.px.tsukuba.ac.jp/]]
---[[広島大学 PHENIXグループ:http://www.hepl.hiroshima-u.ac.jp/welcomejp.html]]
---[[長崎総合科学大学 PHENIXグループ:http://utkhii.px.tsukuba.ac.jp/related_links.html]]
---[[理化学研究所のPHENIX/Spinグループ:http://www.rarf.riken.go.jp/rarf/rhic/index.html]]
---[[理化学研究所 PHENIX Computing Center:http://www.rarf.riken.go.jp/rarf/rhic/rhic-cc-j/index.html]]
---[[高エネルギー加速器研究機構:http://www.kek.jp/ja/index.html]]


-研究会活動
--[[QCD Matter Open Forum (QCFMOF):http://qcdmof.cns.s.u-tokyo.ac.jp]]
--[[Heavy Ion Cafe:http://tkynt2.phys.s.u-tokyo.ac.jp/qgphydro/heavyioncafe.php]]
--[[Heavy Ion Cafe (Facebook):https://www.facebook.com/heavyion.cafe]]
--[[Heavy Ion Pub:http://hken.phys.nagoya-u.ac.jp/hip/]]